どうぶつえん日記

最新のどうぶつえん日記

キオキオの糖尿病 近況報告  5月16日

ワオキツネザルのキオキオ(老齢のため、非公開エリアで飼育中)の近況報告です。
(※2024年6月15日のどうぶつえん日記のその後です。)
昨年の12月頃に食欲が低下した時期もありましたが、餌を細かく刻んだり、インスリン(血糖値をコントロールするホルモンを注射)の投薬量を調整したりすることで、体調が安定しました。

細かく刻んだ餌
細かく刻んだ餌 葉野菜は残します

ワオキツネザルの飼育下の寿命は25年と言われておりますが、キオキオは今年の3月11日に30歳を迎えました。
調べたところ、今までに当園で飼育してきたワオキツネザルの中では、最高齢でした。

年をとりました
年をとりましたが、ジャンプして木にのぼります

糖尿病の治療を開始した時は「もっと良い方法があるんじゃないか」と悩みましたが、良い結果に繋がって嬉しいです。
引き続き穏やかな日々を送ってもらえたらと思います。
(動物病院 千葉 友章)

ドーネが健康に暮らすために  5月3日

ボルネオオランウータンのドーネは、日ごろから体温測定や歯磨きなどの健康チェックを行っています。
国内で飼育している大型類人猿の死因のなかで一番多いものが心臓病と言われています。
当園で飼育していたブロトスも2021年に心臓病で死亡しました。
心臓病の予防と早期発見を目指し、採血トレーニングを始めたことをきっかけに心臓エコー検査トレーニングも実施し、どちらともドーネの協力のおかげで成功することができました。
ドーネすごい!!

そして今回は新しい取り組みとして、血圧測定トレーニングを開始しました。
採血の時と同じように腕を入れる器具の作成から始めました。

これをやりたい
これをやりたい

人間と同じく二の腕にベルトを巻いて測定しようと考えていたのでその箇所に穴を開けて、腕を置いてもらう部分に消防ホースを巻いてみました。

血圧測定器具バージョン1
血圧測定器具バージョン1

実際に試してみたところ腕は問題なく通したのですが、腕の下にベルトを差し込むのが難しいと分かりました。
上記の反省を生かし、器具バージョン2を作成しました。

血圧測定器具バージョン2
血圧測定器具バージョン2

今回はベルトを差し込むのではなく、ベルトを置いた状態でその上に腕を通してもらう方法を考えました。
腕を置いてもらう部分を消防ホースから凹状の木材に変更してみました。
実際に試してみたところ大成功!!

トレーニング、がんばっています
トレーニング、がんばっています

現在は消防ホースを腕に巻き、だんだんと巻く力を強くしている段階です。
測定をする時はベルトに空気を入れて圧迫するのでそれに慣らしていくためです。
これにもいろいろと試行錯誤が必要そうです。
ドーネと一緒に頑張っていきたいと思います。
また進捗ありましたらお話しますね。 
(林 皓太)

オランウータンの心臓病  5月2日

日本動物園水族館協会が発行している動物園水族館雑誌に、国内で飼育しているオランウータンの死因について調査したものが論文として掲載されました。

オランウータンの死因を調べた論文
オランウータンの死因を調べた論文

いしかわ動物園がこの調査を行ったきっかけは、ボルネオオランウータンのブロトスが心臓の病気(心疾患)で死亡したことです。
海外では、心臓の病気が原因で、多くのオランウータンが死亡していることが報告されています。
一方で、国内で飼育しているオランウータンの心臓の病気については、詳しい報告がありません。

そこで全国のオランウータンを飼育していた動物園に協力していただき、オランウータンの死因や診療内容を調査することにしました。
その結果、国内でも心臓の病気が原因で、多くのオランウータンが死亡していることが明らかになりました。
また、オランウータンの心臓の病気を生きている間に見つけることは、とても難しいということも分かりました。

これらの調査内容を、他の動物園がいつでも検索できるようにするために、論文にしました。
現在、いしかわ動物園ではボルネオオランウータンのドーネに協力してもらい、オランウータンの心臓の病気が早期に分かる検査方法を模索しています。 (※ アニマルあいズ2024 春号・Vol,5-1参照 / PDF:ファイル/8,8MB)
検査するためのトレーニング自体は、熱意ある飼育担当者と、賢いドーネのおかげで順調に進んでおりますが、検査結果をまとめるところに苦慮しています。

ドーネの採血
ドーネの採血

国内では誰も行ったことのない取り組みなので一朝一夕には行きませんが、模索することをやめなければ、いつかは検査方法を確立できると信じています。
この取り組みを確立して、ドーネはもちろんのこと、全国のオランウータンの健康管理に繋げることが、ブロトスへの手向けであると考えています。

在りし日のブロトス
在りし日のブロトス

(動物病院 千葉 友章)

毛刈りの季節がやってきました  4月21日

綺麗に咲いていた桜も散り始め、暖かい日が多くなってきました。
私たちにとっては過ごしやすい季節ですが、動物にとってはこの暖かさも油断ならないことがあります。
特にこれから夏にかけての気温変化は、もともと寒いところで暮らしている動物や温度変化に弱い動物には、耐えがたいものになってしまいます。

動物園では冷房を使ったり、氷を置いてみたりいろいろな対策をしていますが、特別な対策が必要な動物もいます。
それが、ふれあいひろばにいるアルパカとヒツジです。
アルパカとヒツジは毛が生え変わらずにずっと伸び続けるので、一年間で蓄えたモコモコの毛を私たちで刈ってあげないといけません。

毛刈り前のキャンディ
毛刈り前のキャンディ

暑さがひどくなる前に毛を刈ってあげたいので、毎年4月から5月、遅くても6月には毛刈りをします。
今年はまず初めにアルパカのキャンディの毛刈りをしました。

毛刈りの様子
毛刈りの様子

キャンディは当園にいる3頭のアルパカの中でも一番やせ型なので、毛を刈った後はかなりスマートな見た目になっています。
ちなみにアルパカの毛刈りは胴回りの毛さえ刈ってあれば、頭や脚などの部位に毛が残っていても暑さの観点では問題はないとされているので、アルパカのヘアスタイルなどをデザインカットしてアルパカの個性を出しているところもあります。
キャンディも今回は頭と脚、そして尻尾の毛を残して少し可愛らしくしてあります。

毛刈り後のキャンディ
毛刈り後のキャンディ

アルパカやヒツジの毛を刈るのは暑さ対策や私たち人間が彼らの毛を利用するためだけではなく、それ以外の役割もあります。
例えば、毛刈りをすることで普段簡単には見られない皮膚の状態を確認したり、伸びすぎた毛に排泄物が付いて病気の原因になるのを防いだりすることができます。

1年に1回しかしない毛刈りですが、動物にとっても飼育する私たちにとっても大事なお世話の一つです。
今後も順番にアルパカとヒツジたちの毛刈りを行っていくので、ぜひ毛刈りの前も後も両方ご覧になって動物たちの姿の変化を楽しんでみてください。
(脇 慎之介) 

「取り出し方の変化」  4月20日

以前から、サニーにはフィーダー(給餌器)として、中にヘイキューブ(乾草を固めた物)を入れた消防ホースを与えていました。
以前は、鼻で消防ホースを掴んで振り上げ、頭にぺちっと当ててから力強く地面に叩きつけて、その勢いでヘイキューブを取り出していました。

消防ホースを叩きつけるサニー
消防ホースを叩きつけるサニー

叩きつける時の音は隣の獣舎にいても聞こえるほど大きく、音を聞くだけで「お!がんばっとるな」と思っていました。
何なら勢いが強すぎて観覧通路までヘイキューブが飛んで行く事もあり、来園者に当たっては大変ということで、数年前から休園日限定のフィーダーとして使っていました。
ところが、最近休園日に消防ホースを与えてみても、あの地面に叩きつける音は聞こえてきません。
じっくり観察してみると、鼻を使い消防ホースをやさしく掴み、絶妙な力加減で程よく中に空間を作り、ぽろぽろとその場に落とし、取り出していました。

消防ホースの中に空間を作るサニー
消防ホースの中に空間を作るサニー

確かに、労力をあまり使わずに取り出している点では、「考えたなぁ、賢いなぁ」と思いますが、個人的には以前の取り出しかたの方が迫力があって好きだったので、またあの音聞きたいなぁと思っています。
もう少し様子を見て、やはり振り上げずに取り出すのであれば、ヘイキューブが観覧通路に飛ぶ心配もないので、開園日に消防ホースを与えてもいいかなと思っています。
(小倉 康武)